臺灣の大晦日の晩餐:縁起の良い年越し料理

▲舊正月の大晦日に家族全員が集まりともに夕食を食べることで、円卓の中央にはしばしば鍋が置かれています。(寫真・金蓬萊遵古臺菜)

【文  Yi Tseng】【編集 下山敬之】【寫真 金蓬萊遵古臺菜、採緹油飯、黃虹綺、Stanley Wang、April Chen、許育華、郭一村、水晶安蹄、臺北市観光伝播局】

多くの地域から様々な影響を受けていることが臺灣食文化の特徴です。 古くは福建から移民した越族と閩族、20世紀前半の日本時代、國共內戦から逃れた數百萬人の人々がもたらした多様な文化が混ざり合っています。

文化背景や言語も多様性に富んだコミュニティであるにもかかわらず、臺灣には伝統的な舊暦に関する知識が広く伝わっています。そのため、舊暦の大晦日は実家に帰り、運気を上げるための縁起の良い料理を用意します。例えば、「年年有餘(今年も裕福でありますように)」という意味が込められた魚料理や「招財進寶(財を招く)」という意味の元寶の形をした餃子、「年年高升(年々升進しますように)」という意味を込めた餅菓子の年糕、「團圓(家族団らん)」を象徴する火鍋などがあります。

これらの料理は、基本となる材料の組み合わせによって、各家族の文化的背景が見えてきます。ここでは、一年で最も重要な臺灣の舊暦大晦日に食べられる料理の數々を紹介していきます。

魚料理:年年有餘

臺灣の人々は新年に「年年有餘(ニェンニェンヨウユー)」と言って、裕福になれるよう願います。中國語では「有餘(餘剰にある)」と「有魚(魚がある)」の発音が似ていることから、魚料理は運気を上げるものとして欠かすことができません。また、魚料理は「有餘」であることを示すために完食をしてはいけません。

魚料理をお店で食べる場合は、ミシュランのビブグルマンや人々からの評価が高い「栄栄園」がおすすめです。江蘇料理と浙江料理の風味が漂う馬頭魚(アマダイ)の焼豆腐が名物料理です。他にも、長い歴史を誇る老舗「億長御坊」の蔥㸆鯽魚(フナの甘露煮)は、ほのかな甘さで子供から大人まで楽しめます。

▲「豊かな収獲」を象徴する魚料理は欠かせません。(寫真・郭一村)

より高級な味わいを求めるのであれば、「新東南海鮮餐庁」のハタやマーブルゴビーの蒸し焼きも評価が高いのでおすすめです。伝統に対してオープンマインドな若い家族は、「上引水產」から新鮮な刺身を選ぶことができ、食卓に爽やかでスタイリッシュな要素を加えることができます。

▲現代の家族は、味の対比のために刺身を選ぶことがあります(寫真・Stanley Wang)

餃子:招財進寶

餃子の形は古代中國の通貨である「元寶」と形が似ています。そのため、舊正月の期間は繁栄の象徴として人気が高く、 大晦日に餃子を食べることで、お金持ちになることを願います。臺灣各地の有名な餃子屋は、正月當日まで毎日長蛇の列ができます。

▲餃子の形は古代中國の通貨「元寶」の形と似ているため、大晦日に餃子を食べることで、「來年はお金持ちになれますように」という意味があります。(寫真・水晶安蹄)

蔡英文総統の好物と言われている「巧之味」のホタテ餃子や、庶民的な具材や調味料が使われた「阿玉水餃」の冷凍餃子などはその最たる例と言えます。もし家族と一緒に年を越せない場合、これらの簡単で作りやすく、美味しい餃子は、歓迎される儀式感をもたらすことでしょう。

佛跳牆:幸福、長壽、健康

臺灣の高級スープ「佛跳牆」には高級イカや冬タケノコ、鶏肉、ハムなどさまざまな食材が使用されています。料理名の由來はその美味しいそうな香りに、仏陀ですらお寺の塀を登って食べに行ってしまうためと言われています。

▲様々な高級食材が使用される「佛跳牆」の名前は、仏陀ですらその香りに耐えられずお寺の塀を登って食べに行ってしまうことが由來とされています。(寫真・金蓬萊遵古臺菜)

スープに入れる具材はそれぞれ別々に調理をする必要があり、その復雑な手順から現代では「金蓬萊遵古臺菜」などのレストランで註文をすることが一般的となっています。こちらのお店はミシュランの星を獲得しているので、遅くとも2周間前までには予約をしておく必要があります。

年糕:年年高升

伝統的な市場では年糕(ニエンガオ)や蘿蔔糕(ルォボーガオ)などの點心が並びます。中國語では「糕」と「高(高まる)」が同じ「ガオ」という発音になるので、縁起が良いとされています。各家庭によって好みの味があり、たとえ人気店で並ぶ必要があっても妥協はしません。

▲中國語では「糕」と「高(高まる)」の発音が同じなので。(寫真・採緹油飯)

蘿蔔糕は大根餅のことで、特に東門市場にある「興記」、萬華區三水街にある「紅亀伯」といったお店が人気です。年糕は臺灣の人々の間では、「年年高升(ニェンニェンガオシェン)」と言って、仕事や物事が年々良くなるという言葉と似た発音が入っていることから縁起が良いとされ、一般家庭でも作られます。特に大晦日に手作りの年糕の寫真をSNSでアップすれば、たくさんの「いいね!」が得られるでしょう。

▲大晦日に年糕を食べることで、「年々升進しますように」という願いが込められています。(寫真・採緹油飯)

カラスミ:子孫と家族の繁栄

冬になるとボラは產卵のために臺灣南部へ移動します。カラスミは卵がたくさん詰まったボラの卵巣を數週間天日干しした食品です。こうすることで、カラスノエ子の味わいは濃厚で、食感も十分です。

▲カラスミの皿は、家族が繁栄し、子孫が多いことを意味します。(寫真・許育華)

養殖カラスミも市販されてはいますが、天然の方が品質が高く貴重なので、ちょっとした贅沢品として扱われています。そのため、日常的に食べるものではありませんが、舊正月を祝う際にはカラスミを盛大に皿に盛りつけます。卵がたくさん入ったカラスミを食べることで、子孫の繁栄、ひいては家庭の繁栄につながると信じられています。

調理法は至ってシンプルで、カットしたカラスミをフライパンや直火で軽く焼くだけ。注意すべき點は、中心部のしっとりとした食感を保つことです。スライスした大根やニンニク、あるいはリンゴを添えると、 口の中に香りが広がり贅沢な味覚が楽しめます。

▲大稲埕の迪化街では、臺北で最も有名な臺北新年祭りの一つ「臺北年貨大街」が開催されています。(寫真・黃虹綺)

臺灣の人々は舊正月を迎える前に大稲埕の迪化街に行き、「臺北年貨大街」でカラスミや新年のお供物などを買います。海外の観光客であっても、しばしば店舗で無料のサンプルとして提供されているカラスミの一片に引かれることがあります。これは臺灣の食卓で最も美味しい伝統的な島の美食の一つです。

▲通り沿いの屋臺では無料の試食が提供され、訪れる人々を魅了しています。(寫真・臺北市観光伝播局)

火鍋:家族団らん

西洋社會では重要な食事は長い食卓を大勢で囲みますが、臺灣の場合は円卓であり、中心にはメインとなる料理が置かれます。大晦日の夕食の場合は火鍋がメインとなり、円卓の上に丸い鍋、スープの入った丸いお椀が並びます。中國語では「團圓(円が集まる)」と書いて団らんという意味があります。家族が円卓の上の鍋を囲むことで新年も家庭円満であることを願うのです。

▲ホットポットはさまざまな形を取ることができます。特に若い世代の間でスパイシーなホットボットが特に人気です。(寫真・April Chen)

鍋の食べ方はいくつかあり、すでに具材が煮えた狀態の鍋を出したり、生の食材を出して各自で煮たりします。いずれにしても新年のお祝いなので、豪華に見えるようたくさんの食材を用意し、「有餘」であることを表現しなければいけません。

鍋のスープはテイクアウトできます。中でも若者に人気の麻辣鍋が食べられる「鼎旺麻辣鍋」には多くのお客さんが訪れ、このお店のスープと市場で買った肉や野菜を持ち帰ります。他にも南門市場にある「南門魚丸店」の卵餃子も鍋の具材として人気があり、舊正月シーズンには整理券が配られるほど長蛇の列ができます。

舊正月の本質は家族団らんであり、ボリュームのある縁起の良い料理の數々が離れて暮らす家族を呼び戻します。大晦日に家族で美味しい料理に舌鼓を打ち、夜遅くまで會話をする様子は、幸せに満ちた新年が訪れることの象徴なのです。