春の陽明山と緑の癒やし

▲陽明山國家公園は2020年に世界初の「Urban Quiet Park」として認定されました。この畫像は、七星山地域の靜けさを表しています。(寫真・Brown Chen)

Rick Charette

編集

下山敬之

寫真

Brown Chen、Mike Sung、Jeremy Kuahn、 裡山、 雲森陶陶

臺北は國際的な観光地として優れた名所を數多く有していますが、中でも最大の特徴と言えるのが市內にある広大な國立公園です。綠があふれる陽明山國家公園は臺北でも有數の観光スポットとなっています。市の北部にある大きな陽明山の山々に王冠のようにそびえ立つこの公園には様々な展望スポットがあり、市の中心部を直接見下ろすことができます。

臺北市の中心からバスで1時間ほどの所にあるこの公園は、そのアクセスの良さと周囲にある広大な綠地帯から地元住民にとっての愈しの場となっており、彼らはこの靜かで理想的な場所を「裡の庭園」と呼んで親しんでいます。春になると園內にはパステルカラーの花々が咲き誇り、私たちの心身を愈やしてくれます。

ここでは春のツアーガイドとして、この季節に咲くさまざまな花や自然の恵み、持続可能なグリーン・ツーリズムの聖地となっている113 km²に及ぶ広大なプレイスポットを紹介していきます。

美しい地形

陽明山に連なる山々は大屯火山羣としても知られる場所で、長い間噴火していない休火山の集積地です。地下深くには大きなマグマ溜まりがあり、その上方には溫水が貯まっています。上空から見ると北部にはなだらかで丸みのある斜面が広がっていますが、これはかつて大規模な溶岩流が発生した跡です。南部にある紗帽山は山頂がニット帽のようなドーム狀になっており、この形がかつて用いられた紗帽(サモ)という帽子に似ていることからこの名前が付けられました。紗帽山は付近の火山から流れ出た粘性の溶岩流が固まったできた山で、陽明山に豊かな土壌や密生した植物、珍しい地形を作り出しました。

▲春は陽明山で花見をするのに最適な季節です。(寫真・Mike Sung)

グリーン・エコロジー

五感をフルに使って愈しのひとときを楽しむには、靜かな環境の中で自然に注意を傾け、音や匂いを観察して、その美しさを感じます。実際、陽明山國家公園には自然を楽しむための多くの遊歩道があり、それらは當局によって一級の騒音規制地域に指定されています。

2020年にはQuiet Parks Internationalによって、世界初となる「Urban Quiet Park(都市型の靜かな公園)」に認定されました。Quiet Parks Internationalの認定基準によれば、少なくとも3個所の騒音レベルが45dB(デシベル)以下、突発的な騒音レベルは60 dB以下と定められています。通常、森の中を風が吹き抜ける音が約45dB、一般的な會話の音量は60dBに相當します。陽明山で継続的な測定を行ったところ最も靜かな場所はわずか30㏈ほどで、ハイキングの際には常に鳥やカエル、セミの鳴き聲がBGMとして聞こえ、心地よい體験を作り出します。

靜寂のトレイルツアー

▲綠があふれるハイキングコースを歩き、リラックスしましょう。(寫真・Mike Sung)

このツアーの目的地は標高1220mに及ぶ陽明山山脈の最高峰、七星山の東麓。途中、険しい個所もありますが、山頂までの道のりは東西どちらのルートも難しくはなく、1時間ちょっとで登頂できます。山頂からは360度のパノラマが堪能でき、北側には海岸線、南側には臺北盆地とその中に広がる街並みが眺められます。

より平坦で難易度が低いルートであれば、午後からでも行くことができます。菁山路101巷は七星山の東麓を蛇行するように進むルートです。夢幻湖步道は一週2.2キロの週迴コースで、冷水坑ビジターセンターの向かいにある道路からスタートし、夢幻湖へ続く遊歩道を通って、湖の北側の道から數百メートルほど下ってきます(平均勾配12度)。

夢幻という名稱は、この地域がよく霞や霧に覆われることが由來となっており、一帯は陽明山生態保護區の中心となっています。また、ここ以外にはどこにも生育していない、古代の希少な植物である臺灣ミズニラの生息地でもあります。

冷擎歩道は冷水坑ビジターセンターの東側から擎天崗草原へと続く、全長1.8キロの緩やかな阪道です。冷水坑は南に位置する擎天崗の地形を形成している溶岩が七星山の東側を流れる硫黃の川をせき止めてできたもので、低溫の溫泉水が涌き出ています。かつてはせき止め湖がありましたが、ずいぶん前に幹上がってしまいました。ここでは無料の男女別公衆浴場や足湯が楽しめます。

▲靜かな小道を歩き菁山吊り橋を越えると、谷間を流れる渓流の音が聞こえてきます。(寫真・Jeremy Kuahn)

擎天崗に向かう途中には、白色の硫化物を含んだ牛奶湖(牛乳湖)、史蹟でもある歩行者用の菁山吊り橋、冷水坑生態池などのスポットがあるほか、木陰が生い茂る遊歩道では數多くの水生植物が見られます。

▲牛奶湖の周囲を歩くと、獨特な乳白色の景色が見えてきます。(寫真・Jeremy Kuahn)

擎天崗は溶岩が馬の鞍の形に堆積してできた広大な草原です。勾配が緩やかな擎天崗環形歩道は全長2.4キロで、ビジターセンターがスタート兼ゴール地點となります。この場所の見どころは、半野生の狀態で放牧されている水牛です。日本時代には農場がありましたが、現在は廃業しています。

▲擎天崗歩道へ続く小道からは、広大な草原と周囲に立ち並ぶ山々の壯大な景色が眺められます。(寫真・Mike Sung)

花見スポット

陽明山のもう一つの魅力は季節ごとに咲く花です。年間を通して様々な種類の花が咲き亂れ、花や植物が好きな人にとっての楽園となります。季節ごとに全く異なる風景が楽しめます。

2月から3月にかけては桜、3月には臺北市の市花であるツツジ、3月から4月にかけてはオランダカイウ、5月から6月にかけてはアジサイ、10月から11月にかけてはススキと、主に5つの時期に分けられます。

▲満開の時、 陽明山の桜は素晴らしい景色を形作ります。(寫真・Mike Sung)

陽明山花祭り

最も有名な季節は桜が咲く春で、その起源は日本時代にまで溯ります。當時、花見に行けなかった日本人のために陽明山一帯に多くの桜の木が植えられ、多くの人を惹きつけるようになりました。

主な観賞スポットとしては、陽明山のバス停から徒歩圏內にある前山公園と陽明公園があり、後者にはインパクトのある花時計があります。近くにある花卉試験センターも同様に花や植物が好きな人におすすめのスポットです。

▲陽明山の春は、豊富な桜の花で有名な気候の良い季節です。(寫真・Mike Sung)

60年以上の歴史を持つ陽明山花祭りは、毎年2月上旬から3月中旬にかけて開催されます。桜以外にもツツジ、椿、桃、そして臺灣の國花でもある梅の花が見頃を迎えますが、やはり多くの人が注目をするのは種類が豊富な桜です。代表的な品種として八重桜、昭和桜、吉野桜、臺灣山桜などがあります。また、花をテーマにしたウォーキングツアー、ストリートダンスコンテスト、野外音楽パフォーマンスなども行われます。

竹子湖カラー祭り&アジサイ祭り

次に人気の花まつりは、竹子湖のオランダカイウとアジサイが咲く時期で、3月中旬から6月まで続きます。竹子湖はかつて日本人が農業のために水を引いた溼地帯で、その後はモウソウチク(孟宗竹)、茶葉、蓬萊米というお米、キャベツなどが栽培されるようになりました。

▲竹子湖のカラーリリーの満開は、Instagramの影響力者にとって人気のある背景となっています。(寫真・Mike Sung)

竹子湖は七星山の西麓に位置し、もともとは北にある大屯山から流れ出た火山が西と南に堆積して形成されました。現在は、花卉栽培を専門とする持続可能な観光農園で溢れています。最初のオランダカイウまつりが開催されたのは2002年で、最近ではアジサイも取り入れられ、春から初夏にかけて花見が楽しめるようになりました。また、臺灣にあるオランダカイウの80〜90%はここで栽培されています。

▲竹子湖の周囲では5月から6月にかけてアジサイが咲き亂れます。(寫真・Mike Sung)

訪れた人は花畑の小道を歩いて新鮮な花を摘んだり(有料)、集落にある小さなレストランでヘルシーな食事が楽しめます。イベントが開催されている期間中はエコロジーファームのガイドツアーや體験活動、コンサート、造園の展示などが行われます。

陽明山や臺北市內で開催されるフラワーイベントの詳細については、公式サイトをご確認ください。

山中にあるユニークなショップ

裡山 — コーヒーの味わいと美學

陽明山で花見をする際、イスに座ってコーヒーを飲みながら四季折々の風景やその色合い、陰影に浸っている自分を想像してみましょう。きっと素晴らしい體験になるはずです。

▲裡山の庭園のユニークな景観は、訪れた人に靜けさをもたらします。(寫真・裡山)

裡山はそういった體験ができる場所です。オーナーである沈映仁氏が「都會の中に山を作りたかった」と語るように、ここは綠に囲まれた隠れ家であり、アンティークや植物、芸術文化に彩られた臺北市民にも観光客にも愛される週末限定の憩いの場となっています。

ここでは魅力的な綠の庭園や美しい風景、季節ごとに咲く花や植物、そしてその散り際を観賞できるほか、臺灣と日本のアンティークに觸れ、自身の興味のある文物や過去の遺物から掘り出し物を探すこともできます。室內のカフェでは、風鈴の音に耳を済ませながら山奧で淹れたコーヒーの香りが楽しめます。

この芸術的な空間ではアートミュージアムと同じように、臺灣のアーティストの創造力と技術を感じることができます。

雲森陶陶 — 自然の中で體験する陶芸と瞑想

雲森陶陶は陽明山で羽を伸ばし、エネルギーを充電したい人に最適な場所です。綠豊かな植生と大きなガラス窓の中にあるこのスペースは、展示、教室、ワークショップが一體となっており、様々な角度からクリエイティビティとサプライズに満ちた體験ができます。

▲植物に囲まれた美しい景色の中で陶芸が楽しめます。(寫真・雲森陶陶)

オーナーであるデイビッド・ピプキン氏はアメリカ出身で、愈しの哲學を持つ人物です。彼は「陶器を作るのは瞑想と同じようにリラックスをして、自分の手元に集中しなければいけません」と話します。陶芸、瞑想、工芸はアートセラピーの一種で、ストレスを緩和するだけでなく、創造的なプロセスを通じて人生にエネルギーと情熱を注ぎ込みます。

▲植物に囲まれた美しい景色の中で陶芸が楽しめます。(寫真・雲森陶陶)

雲森陶陶では山間部での陶芸體験を行っていて、事前に予約をすれば華語と英語限定にはなりますが、低溫で焼成する「楽焼(らくやき)」の基本的な指導を受けることができます。ここで作った作品は旅行のお土產や記念品として最適です。

陽明山には自然という名の寶物がたくさんあります。また、四季を通じて美しい景色が見られるスポットですが、最もオススメな季節は色彩の鮮やかな春です。ぜひ靜寂を感じられる春の旅に出かけてみて下さい。